JustFlip! ユーザーマニュアル

章 3

よいカードの書き方

カードは問題と答えでできています。それ以外はすべて任意ですが、楽しいのはそこからです。シンプルなテキストフィールドの裏には、小さくて親しみやすいマークアップ言語があります。穴埋めの空欄、組版された数式、色分けされたコード、ダイアグラム、表、そして思いどおりに読み上げられる言葉。

この章の内容
  • カードエディタの使い方を知る
  • テキストに書式を付け、リンクや穴埋め(クローズ)カードを追加する
  • カードに数式、コード、ダイアグラム、表を入れる
  • ライトモードでもダークモードでもきれいに見える画像を追加する
  • 読み上げる内容を声に伝え、それが効く 4 つの場所を覚える
  • 記憶にしっかり残るカードを書く

3.1 カードエディタの概要

カードエディタ。各面に「テキスト」「画像」「オーディオ」のタブ、書式ツールバー、言語の選択があります。

どのカードにも問題と解答の 2 つの面があり、それぞれ別々に編集します。各面には 3 つのタブがあります。

  • テキスト:入力する内容。上に書式ツールバーがあります。
  • 画像:「写真」から選んだ(またはテキストに貼り付けた)画像 1 枚。
  • オーディオ:.mp3、.m4a、.wav などのオーディオファイル。

テキストフィールドの下には、書式設定のヘルプ(この章をポケットサイズにしたもので、いつでもワンタップで開けます)と、その面の 言語 があります。

面を空にすることはできません。問題と解答の両方にテキスト、画像、または音声が入っていないと、保存 は押せるようになりません。どのタブで保存するかも重要です。テキストと画像や音声を、どちらも失わずに組み合わせる方法は第 4 章で説明します。

3.1.1 ツールバー

マークアップを覚える必要はまったくありません。テキストフィールドの上のツールバーが、選択した部分を囲む形でマークアップを挿入してくれます。ツールバーは横にスクロールでき、左から順に次のボタンが並んでいます。

ボタン 挿入される内容
画像 その面の画像を、カーソルの位置に
B / I **bold** / *italic*
</> `inline code`
f(x) / Σ $inline maths$ / $$ の数式ブロック
波形 [shown]{spoken}:読み上げのヒント
穴埋め {{c1::…}}:穴埋めの空欄
リンク [label](https://…)
表 2 列の表
図 mermaid のダイアグラムブロック
大きな文字 ::: hero ブロック

3.1.2 言語は大切です

言語 の選択は、その面をどの声で読み上げるかを JustFlip! に伝えます。面ごとに別々に設定できます。たとえば表面にスペイン語の単語、裏面にその日本語の意味、といった具合です。

注意
言語がなければ、声も出ません

新しいカードの言語はなしから始まり、言語のない面は読み上げられません。スピーカーボタンでも、「カードを読み上げ」でも同じです。カードが黙ったままなら、まず言語を確認してください。

3.1.3 タグとフラグ

タグはチップ形式の入力欄に入力します。Return キー、+ ボタン、またはカンマを押すと、テキストがタグになります。verbs, irregular, A2 を貼り付ければ、一度に 3 つのチップができます。大文字と小文字は区別されず、重複は取り除かれます。色のフラグを付けると、デッキを見るときにそのカードが目立ちます。

3.2 きれいに見えるテキスト

カードのテキストは、小さな画面向けに簡略化した Markdown です。プレーンテキストの見た目を整える要素は次のとおりです。

入力する内容
ミトコンドリアは*細胞*の
**発電所**です。関数は
`atp_synthase()` です。
カードでの表示
解答

ミトコンドリアは細胞の発電所です。関数はatp_synthase() です。

  • **bold** と *italic*:強調。
  • `code`:等幅のコード片。
  • \*:バックスラッシュを付けると次の文字がそのまま表示されるので、\*not italic\* はアスタリスクが残ります。
  • 空行で新しい段落になります。1 つだけの改行はそのまま保たれます。
知っておくと便利
あえて省いているもの

カードは小さいので、Markdown のいくつかの書き方は使えません。# で始まる行はプレーンテキストとして表示されます。シャープ記号は取り除かれ、カードに見出しはありません。- や 1. などのリスト記号は入力したとおりに表示されますが、たいていはそれで十分でしょう。

3.2.1 リンク

[the guide](https://example.com) と書くと、the guide がタップできるリンクとして表示されます。Web(https://)、メール(mailto:)、電話(tel:)のリンクが使えます。それ以外の種類のリンクはプレーンテキストとして表示されます。

3.3 穴埋め

穴埋め(クローズ)カードは、文の一部を隠します。問題面には空欄が表示され、カードをめくると隠れていた言葉が強調表示されて現れます。ノートの 1 段落を、テストできる形に変えるいちばんの近道です。

入力する内容
フランスの首都は
{{c1::パリ}}です。
カードでの表示
問題

フランスの首都は[…]です。

2 つ目のコロンのペアのあとにヒントを付けられます。ヒントは空欄の中に表示され、声は「空欄」の代わりにヒントを読み上げます。

入力する内容
{{c1::ミトコンドリア::細胞小器官}}は
細胞の ATP の大部分を作ります。
カードでの表示
問題

[細胞小器官]は細胞の ATP の大部分を作ります。

カードをめくると、答えに印が付いた状態で文全体が戻ってきます。ミトコンドリアは細胞の ATP の大部分を作ります。穴埋めカードの解答面は任意です。そこに書いた内容は、答えが表示された文の下に補足として表示されます。

注意
カードの空欄はすべて一緒に隠れます

空欄には c1、c2、c3… と番号を付けますが、JustFlip! ではひとつのカードのすべての空欄が同時に隠れて同時に現れ、カードはひとつの項目として復習されます。空欄ごとに別々にテストしたい場合は、空欄ごとにカードを 1 枚ずつ作ってください。

Anki のユーザーなら別の動作をご存じでしょう。Anki では番号ごとに別のカードになります。Anki の穴埋めノートを読み込むと、まさにそのとおりになります。番号ごとに 1 枚のカードに分けられるので、Anki で学習した内容は何も失われません。

頭を悩ませずに済む、いくつかの細かな点です。

  • 正しい形の空欄だけが有効です。{{c0::x}}、{{c1::}}、{{not a cloze}} は、波かっこも含めてそのまま表示されます。
  • 波かっこそのものを表示したい場合は、\{\{c1::…}} と書きます。
  • コードや数式の中の {{c1::…}} はそのまま、文字どおりに表示されます。

3.4 大きく、中央に

1 文字だけのカードもあります。かな、漢字、元素記号、コード名など。それを hero ブロックに入れると、カードいっぱいに表示されます。

入力する内容
::: hero
あ
:::
カードでの表示
問題

あ

::: center は、サイズを変えずに同じことをします。内容が中央に配置されるだけです。ブロックは ::: hero または ::: center だけの行で開き、::: で閉じます。

ヒント
大きさで強調する

補足はブロックの外に書いて通常のテキストのままにし、hero ブロックの中では太字や斜体を使わないようにしましょう。あの大きさでは、かえってうるさくなるだけです。

3.5 数式

JustFlip! は、世界中の数学者が使っている TeX の記法で数式を組版します。数式を 1 つのドル記号で囲むと文中に、$$ の行で挟むと独立した中央揃えの行に表示されます。

入力する内容
導関数:

$$
f'(x) = \lim_{h\to 0}\frac{f(x+h)-f(x)}{h}
$$
カードでの表示
解答

導関数:

f′(x)=limh→0f(x+h)−f(x)hf'(x) = \lim_{h\to 0}\frac{f(x+h)-f(x)}{h}

アプリ内の数式カード。数式はどのサイズでもくっきり表示されます。

インライン数式も同じように使えます。$E = mc^2$ は、文の中でそのまま E=mc2E = mc^2 になります。読み上げたときに数式を正しく聞こえるようにする方法は、読み上げる内容を声に伝えるで説明します。

3.6 コード

コードはバッククォート 3 つで囲み、開始の囲みのあとに言語名を書きます。JustFlip! はキーワード、文字列、コメント、数値、型を色分けします。

入力する内容
```swift
let answer = 6 * 7
// prints 42
print(answer)
```
カードでの表示
解答
let answer = 6 * 7
// prints 42
print(answer)

認識される言語名:Swift、Python、JavaScript、TypeScript、Java、Kotlin、C、C++、C#、Objective-C、Go、Rust、Ruby、PHP、SQL、Bash、Smalltalk/Pharo、JSON、YAML。名前が不明または未指定でも、色が付かないだけで、すっきりした等幅のブロックとして表示されます。コードブロック内のテキストは書いたとおりに表示され、マークアップは適用されません。

3.7 ダイアグラム

mermaid と名前を付けたコードブロックは、コードとしては表示されません。JustFlip! がそれを図として描きます。フローチャート、シーケンス図、状態遷移図、クラス図、ER 図に対応しています。

入力する内容
```mermaid
graph TD
  A[Start review] --> B{Card due?}
  B -->|Yes| C[Show question]
  B -->|No| D[All caught up]
```
カードでの表示

ヒント
カードに収まるダイアグラム

ラベルの短い箱を 8 個程度にとどめましょう。まずは graph TD(上から下)で始めてください。カードに収まりやすい場合、JustFlip! はフローチャートを横向きにすることがあります。細部を見るには、拡大ボタンで図をフルスクリーン表示できます。

3.8 表

ちょっとした比較は、表にすると読みやすくなります。表の上には空行を入れてください。最初の行は見出しで、太字で表示されます。

入力する内容
| 時制 | 形 |
|---|---|
| 現在 | I go |
| 過去 | I went |
| 現在完了 | I have gone |
カードでの表示
解答
時制 形
現在 I go
過去 I went
現在完了 I have gone

セルには、カードのほかの部分と同じ書式(太字、コード、数式)が使えます。セルの中に | を表示するには、\| と書きます。

注意
2 列、5 行まで

カードの表は、見出しを含めて最大 2 列 5 行です。それを超える部分は省かれ、省略記号で示されます。|:---|---:| のような配置指定のコロンは受け付けますが、列は常に左揃えになります。表が大きくなるのは、たいていそのカードを何枚かに分けたほうがよいというサインです。

3.9 画像

カードの各面には画像を 1 枚入れられます。「画像」タブで追加するか、テキストツールバーの画像ボタンを使います。画像ボタンを使うと、テキストに目印も挿入されます。

Which bird is this?

![attachment:0]

目印 ![attachment:0] は、テキストの中で画像をどこに置くかを決めます。対応する画像がない目印は、何も表示しません。

画像には説明の欄もあります。VoiceOver は、画像が見えない人のためにこの説明を読み上げます。ひとこと書いておく価値があります。

注意
透明な画像はダークモードで消えます

カードは画像をそのまま描き、背後に背景を敷きません。透明な背景に黒い線の画像は、明るいカードでは完璧に見えても、暗いカードではまったく見えなくなります。図、記譜、線画は、追加する前に白一色の背景を付けておきましょう。

写真やビットマップ画像(PNG、JPEG)を使ってください。SVG ファイルには対応していません。大きな写真をあらかじめ縮小する必要はありません。保存時に JustFlip! が長辺 3,000 ピクセルまで縮小するので、すべてのデバイスで iCloud 同期が速く保たれます。うまく機能する画像については第 4 章で詳しく説明します。

3.10 読み上げる内容を声に伝える

JustFlip! は、その面の言語に合った声でどのカードでも読み上げられます。たいていは正しく読んでくれますが、略語、記号、数式などでうまくいかないこともあります。そんなときは読み上げのヒントを付けられます。何かの直後に波かっこを書くと、代わりにその内容を読み上げるよう声に伝えます。

入力する内容
[iOS]{アイオーエス}の
バックグラウンド更新を有効にする。
カードでの表示
問題

iOSのバックグラウンド更新を有効にする。

読み上げられる内容 “アイオーエスのバックグラウンド更新を有効にする。”

カードには iOS と表示されたまま、声は「アイオーエス」と読みます。このルールが使えるのは、ちょうど次の 4 つの場所です。

場所 書き方
任意のテキスト(角かっこで囲む) [C♯ minor]{シーシャープ・マイナー}
インライン数式 $c^2${シーの二乗}
数式ブロック:閉じる $$ のあと $${ブイ イコール エス ピー ブイ}
画像 ![attachment:0]{赤いりんご}

ヒントがない場合、テキストは普通に読み上げられ、数式はソースのまま読み上げられ、画像は読み上げられません。

注意
それ以外のものに続く波かっこは表示されます

ヒントが効くのはこの 4 つの場所だけです。太字、斜体、角かっこのないテキストのあとでは、波かっこがそのままカードに表示されます。

  • *F♯ major*{エフシャープ・メジャー} → カードには F♯ major{エフシャープ・メジャー} と表示されます
  • *[F♯ major]{エフシャープ・メジャー}* → カードには F♯ major と表示され、声は「エフシャープ・メジャー」と読みます

迷ったら角かっこを使い、書式はその外側に付けましょう。

ヒント
声が間違えるところにヒントを

ヒントは、音楽のシャープやフラット、数式、略語、ローマ字表記の音節など、音声合成がつまずきやすいもののためにあります。すでに書かれていることを繰り返す必要はありません。全体的にもっとよい声にしたい場合は、システムの設定の アクセシビリティ › リーダーと読み上げ › 声 で拡張またはプレミアムの声をダウンロードし、JustFlip! の 設定 › 読み上げ › 声 で選んでください。

3.11 カードが長すぎるとき

JustFlip! はまず、すべてをカードに収めようとします。テキストが収まらない場合は、通常の 80 % の大きさまで少し縮小します。それでも収まらない場合は、最後の完全な行でテキストが切られ、カードの下端がフェードアウトします。

それでも何も失われません。カードの下にある ••• ボタンを押すと、その面の内容全体がシートに表示されます。ダイアグラムや画像が収まっているカードでは、同じ場所に代わりに拡大ボタンがあり、画像をフルスクリーンで開けます。

これはあくまで安全網で、書き方のスタイルではありません。ひと目で読めないカードは、たいてい 2〜3 枚のカードが 1 枚のふりをしているのです。

3.12 記憶に残るカード

書式はカードを心地よくします。次の習慣は、カードを効果的にします。

  1. 1 枚に 1 つの事実。 「三権とは何か?」は、半分の確率で失敗する 1 枚のカードです。権力ごとに 1 枚ずつの 3 枚なら、それぞれがきちんと機能します。
  2. 正確に問う。 正解が 2 つありうる問題では、どちらも身につきません。答えが 1 つに絞られるまで、文脈(または穴埋めのヒント)を加えましょう。
  3. 自分の言葉で。 言い換えること自体が最初の反復で、しかも手間はかかりません。
  4. 画像や音声を加える。 対象そのものが目や耳で捉えるもの(鳥、和音、発音など)なら、ぜひ加えましょう。
  5. デッキ内で問題のテキストが重複しないようにする。
注意
2 枚のカード、1 つの問題

デッキファイルを読み込むと(第 5 章)、問題のテキストがそのデッキの既存のカードと一致するカードは、新しく追加されるのではなく、そのカードを更新します。これにより、デッキを安心して読み込み直せます。ただし、まったく同じ問題のテキストを持つ 2 枚のカード(たとえば「この音名は?」)は 1 枚になってしまいます。共通の問いかけはデッキ名に入れるか、画像だけのカードでは問題のテキストを空にしておきましょう。

3.13 早見表

書き方 結果
**bold** · *italic* 太字 · 斜体
`code` 等幅のコード片
\* 文字どおりの *
[label](https://…) リンク(https、mailto、tel)
{{c1::answer}} めくると現れる空欄
{{c1::answer::hint}} ヒントを表示する空欄
::: hero … ::: とても大きく、中央に配置された内容
::: center … ::: 中央に配置された内容
$x^2$ インライン数式
$$ … $$ 中央揃えの数式ブロック
```swift … ``` 色分けされたコード
```mermaid … ``` ダイアグラム
| A | B | + |---|---| 表(最大 2 × 5)
![attachment:0] その面の画像を、この位置に
[shown]{spoken} 別の内容を読み上げる
$x^2${x squared} 読み上げ付きの数式
![attachment:0]{a red apple} 読み上げ付きの画像

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